講師インタビュー
INTERVIEW
講師インタビュー 第二回 | 松出 直也

バレエ/ジャズダンス講師
松出 直也
奈良県出身
6歳よりバレエを始める。多数のコンクールで入賞し、14歳で渡英 Elmhurst School for Dance ・English National Ballet Schoolにて学ぶ。18歳で劇団四季研究所入所。その後数々の舞台に出演しながらダンスキャプテンも務める。キャッツではミストフェリーズ・ランパスキャット。ウェストサイドストーリーではベイビージョーンを演じる。劇団四季を退団後、世界豪華客船にダンサーとして乗船。 現在はパフォーマーとして舞台やダンス公演に出演、育成、振り付けを行なう他、海外クリエイター来日の際振付助手、通訳なども務める。自身も国内外でWorkshopを開催。
◯主な出演作品
・キャッツ / ミストフェリーズ、ランパスキャット
・ウェストサイド物語 / ベイビー・ジョーン
・美女と野獣 ・Song&Dance60 ・劇団四季FESTIVAL!扉の向こうへ
・米倉涼子×城田優『SHOWTIME』
・原田薫Solo公演『DARAHA ORUKA』
・海宝直人Concert ATTENTION PLEASE2
・東宝『Nostalgic Cabaret 』
キャッツ、美女と野獣 ではダンスキャプテンを務める。
◯振付作品
・SHOW-ismⅪ『BERBER RENDEZVOUS』 (演出 小林香)
・宝塚歌劇団雪組 『Step by Me』、『Tiara Azul -Destino II-』
・OSK日本歌劇団 たけふレビュー『The Diamond Quality』
◯海外クリエイターアシスタント/通訳
・宝塚歌劇団星組『Tiara Azul -Destino-』振付 Nick Winston
・『Broadway Workshop』Hamilton レジデントコレオグラファー Jennifer Jancuska
美しさの本質を追い求め、己を磨き続ける

今回は 講師インタビュー第二回として、バレエ/ジャズダンス講師・松出直也に、現役時代に大切にしていたこと、壁の乗り越え方、そして指導へ の想いを聞きました。
Seed立ち上げ初期から様々なクラスを担当し、多くの生徒を育成し続けた松出氏。同時に、今もなおプロとして最前線で活躍し続けています。研ぎ澄まされた感性とストイックな姿勢で生徒たちを導く彼の言葉から、プロフェッショナルとして生きる覚悟について紐解きます。
プロとしての信頼は、人間性と技術で勝ち取る
ー まずは自己紹介をお願いします。
松出直也 6歳からバレエを始め、14歳でイギリスのエルムハースト・バレエ・スクールとイングリシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学しました。
しかし学びを深めるうちに、自身がバレエダンサーとして食べていくビジョンが見えなくなり...そんな時1人でウェスト・エンドにWickedを観に行きました。
そこで、様々な体格やダンススタイル、歌とお芝居に触れ、「頑張れば、ミュージカルの世界に自分が生きる道があるかもしれない...」と思い、17歳で帰国してすぐに劇団四季の即戦力オーディションを受験し、合格。
劇団四季に所属した8年間は、毎日が壁。心も体も鍛えられました。そして、自分の人生のバイブルとなるような多くの経験をさせていただきました。
その後は海外のクルーズ船へ。ダンスという職業を通してたくさんの国を訪れ、多くの人と出会えました。自分の世界が大きく広がる大切な経験となりました。
その後は日本に帰国し、育成・振付・舞台出演、海外クリエイターの通訳/アシスタント...様々な形で舞台芸術に携わり続けています。
プライベートでは、様々な職業の人達と話し、価値観や共通点を知る事が好きです。
ー 夢を追っていた時代や現役時代、大切にしていたことを教えてください。
松出 “美しさ”と“質”は常に意識していて、自分の永遠のテーマです。
子供の頃からテクニックは強い方ではなく、年齢がいっても何か自分の強みになるものが欲しいと考えていました。「美しさと質は歳を重ねても武器になるかもしれない」と考え、この世のものとは思えないような美しさを目指すようになりました。
自分の持っていないものを、自分の体を通して生み出したいと思っています。そして、どんな時も自分自身を疑う目を持っています。
これまで、どんなにうまくいっても、現状に満足せず「もっとできるんじゃないか?」と問い続けてきた気がします。今もそうありたいと思っています。
人(演出家・振付家・仲間など)に対しては、とにかく“素直に受け入れること”を大切にしています。
まずはど素直に受け取って、やってみる。その上で、言われたことをただクリアするだけじゃなく、それ以上のクオリティで返す。
作品の必要なパーツとして認めてもらえるように、人間性と技術で信頼していただく事はプロとして必要な意識だと考えています。
そして、役をもらって出演させていただけることへの感謝も、忘れずにいたいです。
ー 自身の課題をクリアするために、どんな練習をしていましたか?
松出 「相手が求めているもの」と「自分の理想」をどうマッチさせるかを常に意識していました。
はっきりとしたビジョンを持って、何のためにやるのかを明確にして臨むことが大事だと思っています。
そして本番で緊張することも想定して、その状態でも実力を出せるようにマインドを作る。
「明日これで絶対大丈夫」と自信を持てるところまでやり込む。それくらいやらないと舞台では通用しない、と思っています。
ー これまでの舞台人生で、壁にぶつかったことはありましたか?どう乗り越えましたか?
松出 壁しかなかったです(笑)。
でも、あまり人に相談はしなかった。結局やるのは自分なので。
僕にとって乗り越えるっていうのは、覚悟を決めることなんです。
「絶対にできる」「乗り越える」って決めたら、あとはやるだけ。シンプルだけど、そこに尽きます。
変なんですけど、壁や課題に打ち合った時ほど「来た来たー!!!」と喜びが溢れます。
それに、壁を与えてもらえること自体ありがたいと思っています。
自分が今向き合っているこの壁は、誰かが欲しくても与えてもらえなかった壁かもしれない。そう思うと、逃げずにやるしかないですよね。


「成長=自分次第」ー プロとして生きる覚悟とは
ー Seedの指導で大事にしていることは?
松出 Seedのレッスンでは、まず“嘘をつかない”ことを大事にしています。生徒一人ひとりに対して、小さなことでも見逃さず、その場で伝えるようにしています。
自分が受けたい時に受けたい先生を選んで受けれるオープンクラスとは違い、Seedは逃げられないし言い訳もできない環境です。
でも、それはプロの現場も同じです。演出家も振付家も、自分では選べません。目の前の演出家の要求に応えていくことも、プロに求められる力の一つです。
置かれた環境でどれだけ自分を見つめて、投げ出さずに最高のパフォーマンスを届けるための鍛錬ができるか。それを日々のレッスンの中で鍛えています。
だから僕は「成長に環境は関係ない」と思っています。
オープンクラスでもメンバーが固定のクラスでも、自分のマインドと自分が自分にどこまでのクオリティーを求め続けるのか、自分次第だと思います。
ー 結果を出す生徒に共通していることは?
松出 “素直さ”。もう、これに尽きます。
伸びる子って、ダメ出しされた時に笑ってるんですよ。嬉しそうに。「ありがとうございます!」って。
指摘を前向きに受け取って、自分の伸び代にブロックをかけない。
こういう子って、こちらももっと伸ばしてあげたくなるんですよね。
こちらが発する一言に対して、いろんな見方ができて、深く考えられる。
「自分はこうです!」と固めずに、自分の枠を超えて考えられる人はどんどん表現の幅が広がっていく。色んな人から吸収することが出来る。
どこに行っても可愛がられるし、応援される。そんな子が結果を出していくと思います。
また、継続力も重要ですね。自分で決めたレッスンに通い続けるのは当然。
その上で、自分に足りないものや苦手なもの対する鍛錬をいかに自分の時間で続けられるかが、未来を決めると思います。
ー これから育てたいアーティスト像を教えてください。
松出 まずは「舞台で生きる覚悟」を持っている人。
ただ「好きなことを仕事にすることへの憧れ」だけを持っていては、プロにはなれないと思っています。
他人がどうとかではなく、自分に責任を持てる人ですね。
素直で誠実で、いろんなことに興味を持ち、自分の経験を増やしていける人。出会いを大切にできる人。
僕の尊敬する俳優さんたちは、みんなそういう人です。
そういう人は、強い。
僕も、そんなアーティストを育てていきたいと思っていまし、僕もそんな風に生きたいと思っています。


